獣医師教育|加古川市の総合動物病院(犬・猫・エキゾチックアニマル)

はとの里動物病院

獣医師教育
Vet training program

教育プログラム作成の背景

  現在、「愛玩動物を診る臨床獣医師」の卒後教育においては、「人を診る医師」と異なり、十分な教育研修の機会が広く提供されているとは言えず、その診療技術・知識の向上は勤務する施設により大きく左右されています。また21世紀に入り前世紀まで主流だった犬や猫といった愛玩動物にエキゾチックアニマルと呼ばれる多種多様な動物が加わり、それぞれの種に応じた膨大な知識と手術を含む高度な診療・治療技術が必要とされています。さらには高齢化・孤独社会を背景としたペット飼育人口の拡大に伴い、「飼い主様とその家族である動物の絆」の守り手として、私たちの役割は大きくなっています。
 対して、動物病院における臨床教育は市中病院であるがゆえ、来院される患者さんを診ながら学ぶため、1ヶ月単位で何かを習得するような計画的な研修スケジュールを実施しづらいことも事実であり、日々訪れる患者さんを診ながら若手を育成する私自身の長年の悩みでもありました。
 1999年に兵庫県で動物病院を開設し、はや20余年が経過します。数多くの獣医師や動物看護師とともに動物医療に邁進してきましたが、これらの課題を解決すべく「確固たる自信と探究心をもって診療できる獣医師の育成」を行うべく、本プログラムの作成に至りました。
 現在勤務する獣医師と動物看護師(約20名)とともに学んでくれる獣医師に期待しています。
院長 生田 耕太郎

教育目標

  • ○愛玩動物の診療において求められる「問診能力」と「インフォームド・コンセントの習得」
  • ○飼い主様とその家族である動物の社会的背景を見据えた「全人的・全獣的医療の心構えの育成」
  • ○最新の医療技術と医療知識への「理解と探求心の育成」
  • ○経験年数に応じて手も頭も動く「診断能力」「検査技術」「治療計画」「手技」の習得
  • ○ともに働く獣医師や動物看護師など、「スタッフとの連携・コミュニケーション技術の習得」

教育方法

  • ○POS(Problem Oriented System)とEBM(Evidence-based Medicine)に基づいた実地教育および勉強会やセミナーによる指導
  • ○安全性が担保されるまで検査、手術などの手技に関しては上級医の同席を必須として経験を積む

卒後1~3年目の教育方針

  • ●愛玩動物において医療を行う際は、患者である動物の生活環境にも配慮しなければならない。  基本となる現症歴、既往歴、症状など問診による聴取を正確に行いつつ、飼育(居住)環境など、  アレルギー性疾患の可能性やストレスにも配慮する必要がある。  そのため、飼い主さんへの問診は重要かつ高度であることを認識して行う。
  • ●保護者でもある飼い主さんに「種に応じた保健衛生や習性・心理」についても指導する。  ご家族である飼い主さんの意向を踏まえつつ、専門家としてアドバイスしながら治療を行う。
  • ●意思疎通が確立されていない人と動物の関わり(診療上のリスク)について理解いただく。
  • ●POSとEBMに基づいた検査と診断、治療計画の立案および治療までの一連の医療行為の基礎を  習得する。  (身体検査)視診、聴診、触診、打診など全身の診察法を修得し、主要な所見を把握する。  (診療記録)カルテの記載事項、方法など診療記録の重要性を修得する。
  • ●獣医師に必要な法的知識(獣医師法、獣医療法、家畜伝染病予防法、薬事 法、狂犬病予防法、  動物愛護に関する法律、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)など  の関連法規に関する知識について習熟する。
  • ●当院の設備(CTやDR)の操作を通して、放射線防護ならびに関連する知識(獣医療法のうち  放射線防護に関連する施行規則、放射線障害防止法、労働衛生安全法(電離放射線障害防止規則)  に関する知識を習得する。
  • ●投与する薬剤について、病態と薬剤の選択、薬剤の内容、投与法と副作用、栄養管理などについて  ご家族への説明と同意、診療料金などの説明を適切に行う。

以上をふまえて、上級医が一定の安全性を認めるまで、常に上級医に相談し指示を受けて診療に臨む。診断治療に迷いのある場合は目の前の命に向き合い、経験年数に限らず常に上級医に相談する。

2年間で習得する検査法

検体検査 a. 血液一般検査 b. 生化学検査 c. 尿検査 d. 糞便検査 e. 細胞診 f. 皮膚検査 g. 遺伝子検査(外注検査) h. 微生物検査
X線検査法 a. X線診断(装置の操作法、撮影条件、画像処理、撮影体位、保定など)
b. X線読影法(頭部、頸部、胸部、腹部、泌尿生殖器、骨・関節など)
c. 各種造影法(消化管造影、尿路造影など)
理学的検査法 a. 心電図検査 b. 血圧測定など
内視鏡検査法 a. 呼吸器 b. 上部消化管 c. 下部消化管など
超音波検査法 a. 心臓 b. 腹部臓器など
採血法 臨床検査あるいは病態把握に必要な各種の採血法(静脈血、動脈血)の適応決定と実施
注射法 皮内、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、点滴法、静脈確保などの適応決定と実施
輸血・輸液法 輸血、輸液療法の手技の修得
穿刺法 胸腔、腹腔、関節腔などの各種穿刺法の習得
採尿・導尿法 臨床検査あるいは治療に必要な各種採尿法、導尿法の適応決定と実施
処方・薬物療法 基本的な内科的治療法(薬剤の処方、投与法、食餌療法を含む)の適応決定と実施
繁殖学的知識、技能 発情周期と各種性ホルモンの関係、発情周期と腟スメアの関係など、腟スメアの採取法と評価、腹部触診による妊娠診断法、精液採取法と精液評価法、正常分娩に対する知識と介助

1年目の目標「外科手術の基礎習得」

手術手技の基本的事項 a)滅菌・消毒法・無菌的処置の際に必要な各種の滅菌法、消毒法についての知識・技術、手術野の滅菌やドレーピングなどの知識・技術の習得と実施
b)手術器具などの名称や使用法の習得
c)適切な縫合方法の習得と縫合糸の適応決定
麻酔・蘇生に関するもの a) 動物の全身状態・基礎疾患・身体検査・臨床検査などを基にした手術危険度の評価
b) 手術患者の状態に応じた麻酔管理(吸入麻酔法,注射麻酔法)、気管内挿管および呼吸管理
c) 手術内容・侵襲度に応じた疼痛管理
d) 麻酔器・人口呼吸器の使用法、各種麻酔モニターの使用法、解釈および異常時の対処法
e) 術前・術中・術後の管理
術中の輸血に関するもの a) 術前,術中の輸液法
b) 投薬内容の理解と適応決定
術後管理に関するもの a) 入院中の動物の一般的な管理および処置(感染,鎮痛,輸液,給餌量の決定など)
b) 術後入院中の動物の全身状態の評価
c) リハビリテーションの基礎
d) 術後の動物の異常の検出、重症度、緊急度の判断
緊急的対処法 a) バイタルサインの把握
b) 蘇生法の知識と技術 (挿管法、心マッサージ法、人口呼吸法、除細動、抗ショック療法)

3年間で経験を予定している疾患

 主に愛玩動物を診る市中病院のため、コモンディジーズを数多く経験しつつ、希少な症例にも助手として優先的に関わっていただきます。

1.一般外科 基礎疾患を伴わない、あるいは軽度の動物での卵巣子宮摘出術、精巣摘出術、胃切開術、膀胱切開術、乳腺切除術など
2.循環器科 僧帽弁閉鎖不全症、各種心筋症、心タンポナーデ、高血圧症、肺高血圧症、各種先天性心疾患、イヌ糸状虫症、各種不整脈など
3.腎臓科 腎泌尿器疾患全般(他疾患からの合併症も含む)
4.内分泌科 甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、糖尿病、インスリノーマ、副腎皮質機能低下症、副腎皮質機能亢進症
5.皮膚科 感染性皮膚疾患:表在性膿皮症、深在性膿皮症、毛包虫症、疥癬、細菌性外耳炎、マラセチア外耳炎、混合性外耳炎、炎症性皮膚疾患:ループス・エリテマトーデス、落葉状天疱瘡、無菌性結節性脂肪織炎、無菌性化膿性肉芽腫/肉芽腫症候群
6.腫瘍内科 リンパ腫、肥満細胞腫、白血病(急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病)、多発性骨髄腫、組織球性肉腫、口腔内腫瘍(悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫、エナメル上皮腫)、鼻腔内腫瘍(腺癌、扁平上皮癌、リンパ腫、繊維肉腫)、甲状腺癌、胸腺腫、肺腺癌、肝癌、消化管腺癌、膀胱移行上皮癌、前立腺癌、肛門囊アポクリン腺癌、肛門周囲腺腫、軟部組織肉腫、ワクチン接種部位肉腫、血管肉腫、乳腺腫瘍、骨肉腫、軟骨肉腫、毛芽腫、扁平上皮癌、皮脂腺癌、形質細胞腫
7.消化器科 巨大食道症、重症筋無力症、幽門洞狭窄、ヘリコバクター感染症、炎症性腸疾患(IBD)、特発性リンパ管拡張症、腸閉塞、肝炎、肝リピドーシス、膵炎、膵外分泌不全(EPI)、巨大結腸症、直腸ポリープ、消化管腫瘍(リンパ腫、胃癌、腸腺癌等)、消化管内異物
8.呼吸器科 鼻炎(細菌性、リンパ形質細胞性、真菌性)、鼻咽頭狭窄、鼻腔内腫瘍、鼻咽頭腫瘍、短頭種気道閉塞症候群、喉頭炎、喉頭腫瘍、喉頭麻痺、気管虚脱(胸腔内、胸腔外)、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎(細菌性、吸引性、好酸球性)、肺水腫、肺気腫、肺腫瘍、胸水、気胸、縦隔腫瘍、縦隔気腫、横隔膜ヘルニア、心嚢横隔膜ヘルニア
9.神経科 てんかん、脳腫瘍、脳炎、水頭症、認知症、脳血管障害、髄膜炎、脊髄腫瘍、脊髄梗塞(線維軟骨塞栓症)、椎間板ヘルニアおよび脊椎疾患、変性性脊髄症、前庭障害、末梢神経腫瘍、腕神経叢裂離、多発性神経根神経炎、多発性筋炎、咀嚼筋筋炎、重症筋無力症など
10.放射線科 放射線治療:口腔内腫瘍、鼻腔内腫瘍、中枢神経系腫瘍、皮膚腫瘍、骨腫瘍
画像診断:整形疾患、神経疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、腎・泌尿器疾患
11.軟部外科 外耳道切除術、胃切開術、胆嚢切除術、消化管吻合術、膀胱切開術、卵巣子宮摘出術、精巣摘出術、乳腺摘出術などが適応となる疾患
【実践が望まれる手技】
縫合法、不妊手術、体表腫瘍切除、開腹手技、閉腹手技、結腸固定など
12.整形外科 1)骨疾患:汎骨炎、骨軟骨症、骨軟化症、肥大性骨異栄養症、軟骨芯遺残、骨髄炎、肥大性骨症、骨関節腫瘍
2)骨折:長管骨・骨幹部単純骨折(特に小型犬の橈尺骨骨折)、Salter-Harris 骨折(I〜IV 型)、単純性骨盤骨折
3)関節疾患:股関節形成不全、無菌性大腿骨頭壊死症、膝蓋骨脱臼(Grade I〜III)、前十字靱帯疾患(小型犬)、小型犬の外傷性脱臼(肩関節、肘関節、股関節)、離断性骨軟骨炎、炎症性関節疾患(細菌性関節炎)、変形性関節症
4)その他:咀嚼筋筋炎、簿筋拘縮症、大腿四頭筋拘縮症
13.脳神経外科 水頭症,頭蓋内クモ膜憩室,キアリ様奇形,脳腫瘍,脊髄空洞症,環軸不安定症, 椎間板ヘルニア,尾側頚椎脊髄症(Wobbler 症候群),変性性腰仙椎狭窄症(馬尾症候群),脊椎/脊髄腫瘍,末梢神経鞘腫瘍
14.腫瘍外科 体表腫瘍(特に軟部組織肉腫と肥満細胞腫)、頭頸部腫瘍、口腔内腫瘍、縦隔腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、尿路系腫瘍、内分泌腫瘍、消化管腫瘍、生殖器腫瘍、乳腺腫瘍、筋骨格系腫瘍
15.眼科 眼表面疾患(睫毛疾患、乾性角結膜炎、角膜疾患、結膜疾患、強膜疾患、眼球付属器疾患など)、前部ぶどう膜炎、白内障、緑内障、眼底疾患(網膜変性、網膜出血、網膜剥離など)、神経眼科疾患(ホーナー症候群など)
16.産科・生殖器科 卵巣疾患(卵巣腫瘍、卵胞嚢腫など)、子宮疾患(子宮内膜炎、子宮水腫、子宮蓄膿症、子宮腫瘍など)、難産、精巣疾患(潜在精巣、精巣腫瘍)、前立腺疾患(良性前立腺肥大症、前立腺嚢胞、傍前立腺嚢胞、前立腺膿瘍、前立腺癌など)、乳腺の疾患(乳腺炎、乳腺腫瘍)、偽妊娠、不妊症、造精機能障害、交尾不能症、流産、ブルセラ症、可移植性性器腫瘍など
17.麻酔科 幼弱動物への麻酔、高齢動物への麻酔、心疾患動物への麻酔、肝機能障害動物への麻酔、頭蓋内疾患動物への麻酔
18.救急科 心肺停止、意識障害(頭部外傷など)、呼吸困難(肺水腫など)、胸腔内異常(気胸・ 胸水・血胸・膿胸・乳び胸)、腹腔内異常(腹水・血腹・膿腹・気腹・尿腹)、急性腹症、胃拡張捻転症候群、消化管閉塞、尿路閉塞、大規模外傷
19.行動治療科 臨床動物行動学や行動治療については、外来や入院など治療全般と、一時預かり(ペットホテル)やパピー教室、勉強会やセミナーなどの様々な機会を通して学ぶ